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死の告知に際して、家族の心得

抗ガン剤による脱毛対策

ガン患者に抗ガン剤や放射線などの療法を行なうことで、髪が脱けることがあります。脱毛が病人にあたえるショックは、特に頭髪が一時に脱毛すると、病人の精神にあたえる影響が大きく、悩みは深刻となりますので、その対応を考えてみましょう。

脱毛の起き方

化学療法の副作用によって脱毛が起きます。これはガン細胞を破壊する時に、健康な細胞も一緒に殺してしまうためです。

人によってはわずかな脱毛にとどまることもありますが、髪全体がなくなることもあります。脱毛は治療を開始して2~3週間後から現れることが多いのですが、ときには2、3日後で抜け始める場合があります。脱毛が始まると病人も家族もショックを感じますから、あらかじめ脱毛に対しての知識を知っておくことが大切です。

放射線療法による脱毛の起き方

放射線療法による脱毛は、化学療法の場合と少し異なり、照射を受けた部位だけが脱毛します。放射線照射が頭部に行われている場合には、頭髪が抜けるでしょう。乳ガンの場合に、わきの下を含む範囲の放射線照射を受ければ、わき毛だけが脱毛するでしょう。放射線治療終了後には、髪はまたもとにもどります。いつ戻るのかの時期は個人差がありますが、大体半年から1年以内にはもとにもどるようです。

脱毛の説明を事前にしておく

化学療法を始めるときに、病人に「副作用があるので髪がたくさん抜けるが、化学療法が終われば再び髪が生えてくる」ことを話しておく必要があります。治療後1ヶ月から6週間以内に、はじめは柔らかい髪が生えてくること。

また3~6ヶ月後には、恥ずかしくない状態にもどることを説明しておきます。しかし、再生した髪は、以前より少し細かったり、ちぢれていたり、髪の色も少し違う場合があります。

脱毛が起きたとき

脱毛による苦痛を少しでも和らげるために、以下の注意が考えられます。

  • 治療を開始する前に、短い髪にすると、抜けたときの処理が楽です。
  • ヘアネツト、ナイトキヤップを使用すると、髪がベッドに散らばるのを防げます。
  • かつらを買う場合には、髪を短くした方が、かつらをあわせやすい。
  • 髪があるときに買う場合には、小さめのサイズを選ぶようにします。
  • アクリル製のかつらは本物より安く、洗うのが簡単です。
  • かつらの代わりに、帽子やスカーフでカバーする人もいます。

一時退院での注意

ガンの再発や転移で死の告知を受けた場合でも、一時的に「小康を得る期間」があります。

やがて状態が悪化するのですが、医師はその前にできれば「家に帰って家族といっしょに過ごさせてあげたい」と考えています。また入院している病人自身が「家に帰りたい」とか「だめなら家で死を迎えたい」といった気持ちを示し、退院したいと医師にうったえる場合もあります。

退院を不安がる病人や家族

しかし、こうした医師の考えを、病人や家族が理解できない場合があります。病院でこれまで治療をつづけてきて、特に病状が好転していないのに、退院するようにいわれれば、とまどいや不安を感じたりすることがあります。こうして退院をためらっているうちに、退院の時機を失うという場合は少なくありません。

退院にかかわる問題

退院した後、家族は精神面・看護面でさまざまな問題に直面するかもしれません。ときには病人の痛みがひどくなったり、食物が食べられなくなったりして、家族だけではどうしたらよいのかわからなくなることもあります。このような場合に備え、どのような事態が発生することがあるかをあらかじめ知り、それに対して具体策をたてておくことが必要です。

退院の目的

残された人生を、病院での医療にわずらわされることなく、自宅で比較的自由な生活を送ることが退院の目的です。

痛みのために薬を続けなければならない場合もあります。また、食欲が低下して体力がなくなり、歩く力がなくなった場合に、退院させたのがまちがいだったと悩んだり、「病気なのに退院させた」と親戚の人に非難されてもいけません。そこであらかじめ退院の意味を話し合い、最後まで協力しあえるようにしておくことが大切です。

退院により発生する負担

退院により、家族は病人の世話で忙しくなります。また体力が低下して人手を要するようになった場合、家族の負担はより大きくなってきます。そのため、家事をはじめ生活上の事柄に対して、家族全員の協力態勢が必要となってきます。

一人だけに負担が集中しますと看病疲れから倒れてしまうこともありますので、役割を分担しあって病人を支えるようにしたいものです。

病名に本人が気づいた場合

退院してからも病状が進行していくと、病人は自分の病名や病状に疑いをもち、家族に問いただすということも起こってきます。そんなとき、病名を突然聞かれると、適切な対応ができにくいものです。したがって、病人から質問される場合を考えて、真実を告げるかどうか、家族としての方針を確かめあっておく必要があります。

病状がさらに進行した場合

退院して、やがていろいろな症状が出はじめるようになります。これはあらかじめ予測できたことなのですが、現実になってみると、その対応にあわてる場合も少なくありません。このような事態を避けるために、最後まで在宅療養をつづけるか、時期を見て再入院して病院で最後を迎えるのか、事前に家族の間で決めておくことが望ましいでしょう。

寝たきり老人の介護

寝たきり老人を介護する者は平成10年の統計で女性が85%といいます。寝たきり老人への介護は、老人の病気の内容や状態をよく把握した上で、手は出しすぎず、目は離さずが基本といわれます。ねたきり老人特有の「過度の安静」によって身体の機能の衰えを引き起こす生活から脱却していきたいものです。

介護の実際

「静かに寝かせておく」、「手を貸し過ぎること」が正しい介護と思い、そのように対処していると、病人はますます自分では何も出来ない身体になっていきます。いったん寝たきりになった場合には、日常生活をするための動作でさえ回復させることはむずかしいことになっていきます。そうならないために、現状の機能を維持し、より回復へ向けての介護を望みたいものです。

とこずれに気をつける

寝たきりになった時に気をつけることに、「とこずれ」があります。頭の後ろ、お尻の後ろ、腰の横、かかとなど、寝た状態で圧迫を受けやすい部位が出来やすくなっています。そのため、時々マッサージや寝返り、その部位を清潔にするなどの手助けが必要です。

食事動作

食事をするための動作として、まず仰向けになった姿勢から座位(座いす・背もたれなどを使用)への移行をしたいものです。さらに状態がよければ、ベッドから車椅子ヘ、そして食事の場を寝室から食堂へと拡大していきたいものです。またスプーン、食器はその人に合った器具を使うことも必要です。飲み下すことがむずかしい場合にはミキサー食、刻み食などが必要です。楽呑み、コップ、ストローは、いつも病人の手の届く所に置きたいものです。

理容や着替え

寝たきりの方の寝衣は、1日2回交換したいものです。交換することにより身体を動かし、清潔な状態になれば、少しは気持ちの切り替えになると思います。こうして車椅子への移行も可能になれば、身だしなみや整髪などへの配慮も出てきます。また、寝衣も自分で着脱できる改良衣を用意したり、色も明るい色を選びたいものです。

末期の人の心理

末期の状態にある人は、どのような苦しみや悲しみを経験しているのでしょうか。基本的な以下の7つをあげてみました。

痛みで精神の安定が妨げられる苦しみ

病名にもよりますが、末期の人にはそれ相応の痛みが伴います。こうした病気が肉体的な痛みをもたらし、病人に不安やいらだちなどを与えます。人によっては「気分が安定した時に息を引きとりたい」と思うのでしょうが、痛みが持続したり、強くなると、気持ちが落ち込んでしまい、心の安定が保てないというのが一般的な気持ちでしょう。

肉体が衰え、機能が失われていく悲しみ

病気が進行すると、それに伴って身体の動きが思うようにできなくなることがあり、それがいらだちや悲しみをもたらす原因となります。手が震えてはしが握れなくなったり、鉛筆が使えなくなったり、そうした日常的な行為ができなくなると、言葉に言い表せないほどショックを感じるものです。それが原因で、人前に出たくなくなり、自信を喪失するということがあります。また視力が低下して、本も読めず、テレビも見られなくなることもあります。食欲が低下して、体力が衰え、無気力な状態が続いていくこともあります。

残していく家族や仕事への気がかり

家族をもつ人にとっては、残していく家族への思いは切実です。特に子供が小さかったり、あるいは仕事をやり残したままであると、それが心残りとなって、心の平安は訪れません。残していく家族の経済的見通しが出来るまでは心のゆとりができません。

自分の死を悲しむ家族のない寂しさ

自分が末期ガンであることを知っていたある男性は「自分一人ではとても耐えられません。私を理解してくれる家族があるから耐えられるのです」と語っています。自分の死を悲しみ、支えてくれる家族がいない場合には、その人の寂しさは格別なものでしょう。

自分が消滅する悲しみ

人は自分が死んだ後、何も残らないと思うと、いいようのない寂しさに襲われます。この世に残る子供や孫を通して「自分が伝えられていく」という思いに慰められるということがあります。

何も意味あることを成し遂げなかった悲しみ

末期の人の精神的苦痛の一つは「自分の人生で、何も意味あることを成し遂げられなかった」という後悔の思いにさいなまれることがあります。口にはしませんが、「自分は何のために生まれてきたのか」という後悔にさいなまれ、無口になる人もいます。

自分を支えてくれる存在への願い

末期になると、人は死や死後の世界などについて考えたりすることがあります。こうしたときに普段から信仰を持っている人は、そうした力にすがって精神的な領域へ心を振り向けることがあります。

末期を病院で過ごす

末期の状態にあっても、少しでも快適な生活をおくらせたいと、家族の者も願うものです。

苦痛がある場合、その処置をするのに病院は適切な場ですが、管理上の制約があるため病院は終末期を過ごすのに快適な環境とはいえません。しかし、いつ病気が急変するかわからないし、自宅で世話をする人手がないなどの理由により、末期を病院で過ごす場合が少なくありません。したがって、入院生活を送りながらも、できるだけ快適さを保つ工夫をしたいものです。

個室か複数ベツドの部屋か

入院中に、より自由な生活を送るという点では、個室の方が対応しやすいでしょう。しかし、経済的には負担がかかり、個室が少ないために入室が困難な場合があります。公立病院は比較的個室が少なく重症にならなければ個室には入れないかもしれません。個室が多い病院で経済的な事情が許す場合には、入院の最初から個室を使用してもよいでしょう。そして、例外的な生活を少しでも許可してもらい、生活の幅を広げるようにする方がいいと思います。

何事も看護婦に相談する

末期の病人にとって、食事や検温なども、病院のルール通りにすることがとてもつらい場合があります。たとえば、早朝には食欲がないので、朝食をおそく取りたいということもあるでしょう。しかし、そのような場合でも、病人は自由がききません。また、看護婦の方でも、病人の気持ちに気がつかないことがあります。したがって、このような病人の望みを察知したら、家族の方から患者の状態を話し、例外的な対応がしてもらえるかどうか、看護婦に相談してみるようにおすすめします。

家庭的な気分を感じる配慮

病院の制約のために、病人に細かい対応ができないところを、家族ができれば素晴らしいと思います。

例えば、

  1. 家で使っていた食器を病院に持ってきて食事をする。
  2. ひげ剃りや、髪をとくのを手伝う。
  3. 読みたい本や、趣味の道具を届け、気分や体調のいいときに手がけられるようにする。
  4. 車椅子で病院内や庭の散歩を手伝う。
  5. 食事時間に面会に行き、食事をゆっくり食べさせる。
外泊の機会を多くする

主治医の許可を得て、週末や家族の都合のいい日にできるだけ外泊するのは、病人はもとより家族にとっても意義のあることです。残り少ない時期に病人と家族の交わりの場を多くし、また気がねなく家庭で過ごす時間をもつことは気分転換になります。次第に衰弱が進み、自分の身の回りのことが自分でできなくなったとき、家族はできるだけ病人のそばにいる時間を多くすることが望ましいでしょう。

病院への付き添い

病状が進行した場合には病室に泊まりこむこともあります。あとで家族に心残りがないようにするためにも、末期には病室に泊まる機会をもつのもいいと思います。

末期を自宅で過ごす

自分が不治の病いになったら、終末期を自宅で過ごしたいというアンケート結果があります。しかしそれによって、家族にかかる負担は、入院の場合よりかなり重いことが予想されます。また、終末期を自宅で過ごす場合でも、ぎりぎりまで自宅にいて最後は病院に入院して死を迎える場合と、自宅で死を迎える場合があります。

誰が看病をするのか

家事や看病はまだまだ女性が行なうのが一般的です。したがって病人が女性の場合、「家事や看病をだれがするのか」といった問題が男性の場合よりも発生しやすいでしょう。せっかく自宅で生活できても、病人が家事の心配や気苦労を抱えてしまうようだと逆効果です。

苦痛があるか

苦痛がひどい場合は、無理して自宅に帰ると本人にとっても家族にとってもつらい状態を招いてしまいます。退院するには痛みのない、あるいは痛みが抑えられている状態であることが原則です。

病人の年令による違い

老人の場合、医療機器に囲まれて延命処置を受けるよりも、自宅で最後を迎えさせてやりたいと、周囲の者も考えることができるようです。これに対し50代等の若い年代の場合は、治療の可能性があるのではと考え、自宅で過ごすことへの迷いが家族にも生じやすくなっています。

延命医療とは

死の直前まで、点滴をしたり心臓マッサージを行ったりして治療を継続することが一般的です。こうした延命医療を最後まで必要とするか、それともその必要はないと考えるかで、在宅にするか病院にするかの選択も左右されます。また、次の3点も検討の目安となります。

  1. 看病する人手があるか
  2. 往診してもらえる医師がいるか
  3. 訪問看護を受けられるか
重要なのは病人自身

在宅かどうかを決定するのに最も重要なのは病人自身の気持ちです。たとえば、予後を自分で察知し、自分から医師を説得して自宅に帰ることがあります。もし病人自身が、自宅で死を迎えたい場合には、家族と十分話し合うようにします。

病人が自分で動ける時期

末期といっても、人によって大きな開きがあります。また病状や運動機能がどの程度かによっても、家族に加わる負担が、個々に相違があります。したがって、どのような状態で在宅生活を送ることになるのか、またどんな問題が発生するのかを予測するのは困難なことです。

一般にガンの場合は、脳卒中による寝たきり状態とは違い、麻痺による運動機能障害は発生しない場合が多いようです。つまり、体力低下や衰弱のために動作が緩慢になっても、歩行が出来なかったり、片手が麻痺して使えなかったりする場合は比較的少ないのです。したがって家族の方が日常生活の世話をこまごまと行うことは、かなりの終末期になるまで必要ない場合が多いようです。むしろ病状の進行に対する不安や、告知や死に当面することに伴う精神的な苦しみの方が大きいようです。

病状が進行した時期

病状が進んだときには、交代で看病する人が必要になります。病状が変化しやすく、どんどん悪化していくこともあるので、病状を見守る人が付き添うことが必要です。そして、何か異常があれば、すぐに訪問看護婦や往診してくれる医師に連絡する態勢が必要です。

同居家族内に人手が足りない時は、家政婦やホームヘルパーを頼む必要が出てくるかもしれません。もし在宅で死を迎える場合には、死が近づいた最終段階で病人のそばにいて看病にあたっている家族が2人でついていられるような態勢ならば心づよいでしょう。

在宅での注意

在宅で生活するときには、終末期であってもできるだけ普通の生活を送るようにするといいでしょう。一日中ふとんの中にいる必要はなく、お客様と会ったりできるでしょう。ガンが全身の骨に転移して容易に骨折しやすい状態になると、病院ではトイレへの歩行も、入浴も禁止されることもありますが、自宅の場合は介護者が何人かいれば、入浴することも可能ですが、そうでない場合には清潔に保つために身体を吹いてあげましょう。

退院時に食事についての特別な注意があったり、消化器系のガンでチューブが食道に挿入されている場合以外は、本人が食べたいと思うものを用意するようにし、本人がしたい生活を送れるように配慮することが大切です。

医師に死亡診断書を書いてもらう

自宅で死を迎えると決めた場合、臨終の際にも患者を直接診ていなければ、医師は死亡診断書を書けないので、不審な死ということになります。そのためにも、いざとなったら往診して死亡診断書を書いてもらえる医師を探しておく必要があります。

末期の人との接し方

末期の人を援助する目的は、苦痛や悩みを和らげ、心の平安を増す手助けをすることにあります。そのために心掛ける7つの要点をあげてみました。

心の平安を増すための手助けをする

回復不能な状態にあるならば、少しでも苦しみや悩みから解放させ、満ち足りた気持ちで最後の日々をおくることができるよう手助けをしてあげたいものです。

願いごとをかなえてあげる

心の平安を増すよう手助けするとともに、希望している願いをかなえてあげるようにしてあげることも、大切なことです。末期の人の願いは、私たちが健康である時には、かなえられる当然なことが多いものです。「おいしい物が食べたい」「もう一度、庭の手入れがしたい」等々です。そのためできるかぎり努力して実現させてあげたいものです。

誠実に接する

病人は大変に心が敏感ですから、同情と関心をもって接してあげることが大切でしょう。病人が、心から願うことは、「誰かがそばにいて、私の苦しみや悲しみを分かち合ってほしい」ということでしょう。したがって、病む人と共にいることが大切となります。病む人のそばにいて、さまざまな苦しみや悲しみに耳を傾け、その訴えを聞いてあげることが病む人の求めていることでしょう。

繰り返し訪問する

末期の人を援助する為には、出来るかぎり、何度も訪問してあげることが大切です。そうすれば「寂しい」気持ちが和らぎ、気持ちが穏やかになるでしょう。

訴えに耳を傾ける

末期の人が、何を感じ、何を欲しているのかを聴きとり、願いごとの実現に尽力することが大切です。そのために話に関心をもって聴き、何を望んでいるかをあるがままに受けとめたいものです。

「もう一度、口から物を食べたい」、「洗面所まで歩けるようになりたい」、「おいしい物が食べたい」、「痛みから解放されて、ゆっくり休みたい」

こうした小さな願いに耳を傾けることは、とても大切なことでしょう。

会話が不可能になった時に、ふれあいでコミュニケーション

体力が衰え会話が不可能になった時にも、手でこちらの気持ちを伝えられます。私たちは、相手に触れることによって、「私はあなたと共にいます」というメッセージを送っているのです。会話ができなくなった時には、相手の手をにぎったり、身体をさすってあげたりしながら、コミニュケーションするのも大切です。

まず家族自身のケアを

末期の人のケアに携わる時に注意したいのは、家族自身がこうむるストレスにどう対処していくかということです。末期の人は、援助する人の心を敏感に察知します。もし、家族の方々が、看病に疲れたりして、看護に心がこもらなくなったり、疲れた顔をしていたら、看病を受ける人も負担を感じさせてしまいます。そこで家族の方もゆっくりと息抜きをして、自分たちをケアする時間が必要でしょう。

介護用品

介護用品を選ぶ場合に、利用者にとってどれがよいかを決めることはむずかしいと思います。そのため使いやすさ、使用目的などを明確にする必要があります。基本的には以下の点に留意して選びます。

  1. 簡単に使用できるか。
  2. 丈夫で安全かどうか。
  3. 使用者のサイズや使用する部屋に合うか。
  4. 介護する人の負担にならないか。
  5. 病人の体力や機能の低下を防ぐことが出来るか。
  6. 色やデザインが気持ちを明るくするか。
  7. 利用する場合に、経費負担など医療介護制度で活用できるか。
車椅子

車椅子を利用することで病人の生活の幅を広げることができれば、その使用を考えたいものです。車椅子には、多くの種類がありますが、病人の体格、身体機能に合うものを選びます。色々なタイプがありますが、折りたたみ式のものが便利な場合もあります。また、家屋内の移動や椅子がわりに使う人もいます。玄関の段差をなくすスロープ、屋外から寝室まで床にビニールを敷けば、1台の車椅子が室内と屋外の兼用に使えます。

ベッド

介護用ベッドは、自宅で療養する方の生活をサポートし、付属品を利用することで利用者の行動範囲を広げることに役立ちます。部屋の広さや利用される方の身体の状態に合わせて選びます。

衣類

種類には寝巻き、パジャマ、ネグリジェがあります。材質は木綿、ウールなどの天然繊維がよいと思われます。デザインは、着脱が簡単で着くずれしないものがよいでしょう。寝たきりの場合、褥瘡(床ずれ)の発生を防ぐために、背中に縫い目のないものがよいでしょう。

レンタル用品

介護用品専門店には、多くの種類が展示されているので参考にしましょう。レンタルの場合、料金、期間等を調べて選びます。レンタルの介護用品には、寝返りベッド、電動ベッド、車椅子、床ずれ予防マット、酸素吸入器などがあります。

在宅療法

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告知の方法

病名の告知は主治医が説明するのがベターなのですが、指導医を介したり、家族を介して病名が告知されることがあります。いずれにしろ、どのように、どういう目的で病名を告知するのか理解していることが大切です。

病名告知の時期

病名を告げるために、適切な時期を失しては、かえって害になることがあります。病名を告げる時期は、病気の性質や種類、告知する対象、病名を告知する人の考え方などに左右されるので、一律には論じられません。しかし、病名を告げる時期としては、次のような場合があります。

  1. 本人が自分の病名に疑問を持ち不安を感じている時。
  2. 確定診断がついたとき。
  3. 新しく検査や治療が必要なとき。
  4. 予後の悪いことが予測されるが、退院することが可能な時期。
病名告知の有無

病名を告知するにもいくつかのレベルがあります。

  1. 病名を正しく伝え、その病気について説明する。
  2. 病名をぼかして説明する。たとえば、ガンを潰瘍だとか、白血病を造血障害だというように別の表現をとり、治療を行うために協力を得やすくする場合。
  3. 病名を隠し嘘の病名をいう。たとえば白血病を再生不良性貧血といったり、胃潰瘍といって胃ガンの手術をしたりする場合である。
  4. 求められなければ、あえて正しい病名を告げない。
病気への理解

病名を告げることで人は病気がもたらす意味を自分自身で考えることになります。しかし、病名を告げることで、その病気を誤解して、いたずらに恐怖を与えたり、曲解したりする人もいるので、病名を告げる際には、正しい理解が得られ、適切に対応がなされるよう充分配慮することが大切です。

病名告知の決定

告知を決めるにあたっては以下の要因を考慮することが大切でしょう。

  1. 病気の性質、予後、病気の期間。
  2. 告知される人の年齢、性格、知能、自我の強さ、宗教や信条、社会的経済的立場、病気体験。
  3. 告知する人の性格、宗教や信条、医療に対する考え、経験、能力。
病名告知の意義と目的
  1. 病名を告知することで適切な医療を行なうことができます。
  2. 末期の人がやり残した問題(仕事、財産、遺言など)を、準備することができます。
  3. 癌を告げない人の理由に、ガンを告げれば患者をいたずらに不安に陥れ、絶望においやるというのがあります。確かに、病名を告知するデメリットもあります。人は危機に直面するとショックをうけ、絶望から抑うつ状態に陥ることがあります。しかし、その後人間は前向きの姿勢に転じ、人間的成長を遂げることがあるという意見もあります。

訪問看護の依頼

訪問看護制度は、在宅で介護を必要とする老人が安心して療養生活をおくれるよう、担当の医師の指示の下に、訪問して介護・ケア・生活指導・介護指導などの看護サービスを提供するシステムです。病状の進行が予測される状態での退院時には、悪くなる前に訪問看護を受けるようにしておくと、いろいろと役立つことがあります。訪問看護を受けた家族の方は、訪問看護を受けてよかった点に、「不安な気持ちが支えられた」「処置や清拭などのケアをしてくれた」「主治医と連絡が取れ、適切な対応がなされた」などがあります。

訪問看護の取り扱いと利点

介護保険制度下においても、訪問看護には、これまでどおり主治医の「訪問看護指示書」が必要です。介護保険における訪問看護には、医療機関の行う訪問看護と訪問看護ステーションの行う訪問看護があります。特に訪問看護ステーションについては、

  1. 要介護者等に対して訪問看護を行う介護保険制度上の「指定居宅サービス事業者」
  2. 従来の健康保険法による「指定訪問看護事業者」
  3. 老人保健法による「指定老人訪問看護事業者」

の3種類が存在します。

訪問看護の利用にあたっては、退院してから訪問看護を依頼するよりも、入院中に訪問看護の手続きをしておくことが大切です。

訪問看護サービスの対象者
老人訪問看護制度を利用する
  • 老人医療の受給資格者で、在宅療養している方。
  • 病気やけが等で寝たきりの方、またはそれに近い状態になられた方で、担当の医師が、訪問看護を必要と認めた方。
  • 寝たきりになる心配にある方や、痴呆性老人等で、担当の医師がリハビリテーションを必要と認めた方。
一般訪問看護制度を利用する
  • 通院困難で在宅で療養を継続される難病の方や、重度障害のある方でかかりつけ医師が訪問看護の必要を認めた方。これは年齢の制限はありません
訪問看護サービスを実施する主体

介護保険における訪問看護には、医療機関の行う訪問看護と訪問看護ステーションの行う訪問看護があります。

訪問看護の事業者と主な対象者
指定居宅サービス事業者

対象者は65歳以上または40歳以上65歳未満の特定疾病者で、要介護要支援の認定を受けた人。

指定老人訪問看護事業者(事業者廃止:老人訪問看護療養費)

対象者は要介護認定で「自立」と判定された人、要介護認定自体を受けなかった人等で、医療の必要性があると、医師が判断した人。

指定訪問看護事業者

対象者は若年者など介護保険の被保険者(対象者)でない人で、医療の必要性があると医師が判断した人。

医療保険と介護保険

訪問看護は、現在、医療保険では、医療ニーズが特に高い場合を除いて、週3回を限度として行われています。こうした通常の頻度で行われる要介護者等に対する訪問看護については、介護保険から給付される予定です

。一方、がん末期、急性増悪時のような医療ニーズの高い場合には週3回の制限が撤廃され、毎日、訪問看護を行うことが認められています。このような場合、要介護度に応じた支給限度額の範囲内では対応できませんので、医療保険からの給付が妥当と考えられています。

訪問介護サービスの内容

老人訪問介護とは寝たきり老人等に対し、主治医が必要と認めた場合、その指示を受けて看護婦等が在宅で行う療養上の世話をさします。

具体的には、

  • 病状の観察
  • 医療的処置の実施及び相談(吸引、酸素吸入、カテーテル管理、床ずれ処置、内服管理等)
  • 看護・介護技術の実施と相談(洗髪、清拭、排泄、体位保持等)
  • 栄養、食事療法に関する実施と相談
  • リハビリテーションの実施と相談

等があります。

費用

介護保険制度以前では、医療機関からの訪問介護は医療費の一部として請求され、また訪問看護ステーションの訪問看護も1回250円の定額負担で行われていました。ところが介護保険制度では、訪問看護は原則的に介護保険に組み込まれ、訪問看護を受ける度に1割の自己負担が必要になりました。また新たに居宅療養管理指導料なる負担も増え、患者さんにとって、これまでなかった自己負担が必要になりました。

親戚、訪問介護・看護の確保をします

病人が寝たきりの状態になったり、昼夜付添いが必要な状態になると、家事を手伝ってくれる人や、交代で世話をする人が必要となります。

病気の状態や看病する家族の人数によっては、援助を必要としないこともあるでしょう。しかし、親戚などの援助など、あらかじめ確保しておく方が、いざというときにあわてないですみます。あるいは、条件があえば訪問看護あるいは訪問介護を依頼するなど、事前に手配しておきましょう。親戚への援助を頼むときは退院前に話しあい、どの程度の協力が得られるかを確認しておくとよいでしょう。

入院費用

医療費

一般の医療は健康保険で受けることができます。

ただし、国民健康保険は社会保険に比べ自己負担の割合が高いので、その分出費が多くなります。ガンの場合、放射線療法などの継続的な治療が行われます。こうした療法は定期的集中的に治療し、かつ期間が長いため、治療費はかなりの額になります。また、特別な医療が行われたり、保険では認められていない新薬が投与されると、自己負担額は多くなります。治療の必要上、クリーンルーム(無菌室)に入る場合、治療費は保険で補填できても、部屋代は自己負担になる病院もあります。

差額ベッド料

入院中にかかる費用の中で、大きな負担になるのが、「差額ベッド料」です。

この「差額」というのは、保険が適用される限度額との差額のことです。差額ベッド料は、一日数千円から数万円までの幅がありますが、長期的にはかなりの金額になります。公立病院では差額ベッド数が少なく、保険料だけで入院できるベッドが多いのですが、入院待ちをしなければ入れないのが現状です。

一方民間病院では差額ベッド数が多いので、空いている確率は高いようです。

個室か複数ベッドか

プライバシーが妨げられることがあります。したがって、いちがいに個室がいいとも複数ベッドの病室がいいともいえません。また、重症になった時点で個室に移動する場合、患者が病状の悪化を感じて、個室への移動をいやがることがあります。

医療費支払い限度額と支払い猶予制度

長期にわたるガンの治療には、多額の費用が必要となります。しかし、現在の保険制度では、毎月の医療費自己負担額が一定額を超えると高額療養費の支給対象になり、申請すると一定期間の後に、その差額が払い戻されてきます。また市町村自治体によっては、医療費の無利子の貸付け制度があるので、それがあれば利用するのもいいでしょう。

また、病院によっては、誓約書を入れれば分割払いにできたり、支払い期限を延ばせたりという、院内処理による支払い猶予制度があるので、相談するといいでしょう。これらの制度については、入院手続きのときに説明があるわけではないので、婦長などに相談するといいでしょう。

その他の出費

入院生活では、いろいろな必需品をそろえる費用がかかります。また、面会での費用もばかになりません。次に出費がかさむものを簡単にあげておきます。

  1. 寝まき
    病人を清潔にさせるために、たびたび交換しなければならず、洗濯しても乾かなかったりすることがあるので、多くの枚数が必要。

  2. パンツやシャツなど数多く必要。タオル類バスタオルや普通サイズのタオルが何枚も必要。
  3. 紙おむつ
    紙おむつやおむつカバーを使用する場合、入院中でも個人で用意します。
  4. 家族の交通費、宿泊代
    病院が離れている場合、交通費がかかります。荷物などがあれば、タクシーの利用回数も多くなりがちです。
  5. その他
    テレビのリース代、家族が泊まりこむ際の寝具の借用料、家族の外食代なども必要になります。

ホスピス

ホスピスは、「親切にお客をもてなす所」という意味で、末期の人が人生の最後を充実して過ごせるよう、専門スタッフがさまざまな協力を積極的に行う場です。病院よりややゆったりしたリズムの生活、親密な人間関係を基本に、患者の苦痛に積極的に対処していく特別なケアをする場所といえるでしょう。

病名告知は、あくまでも本人の気持ちを尊重し、家族とも相談しながら慎重に行います。精神的な援助にも積極的で、時間をかけて病人の話を聞く姿勢を持っています。さらに、家族を支援しようとする姿勢も強く、家族の気持ちを聞いたり、宿泊への配慮などもいきとどいています。

もちろん散歩や外出、また病室での書き物などへの理解もあります。また、ホスピスによってはキリスト教あるいは仏教の宗教的な行事を行っています。

ホスピスの使命
  1. 身体的な苦痛のコントロール
  2. 精神的な苦痛のコントロール
  3. 社会的な苦痛のコントロール

ガン終末状態で苦しんでいる病人を看護している家族は、ホスピスなら苦しみをとってくれるかもしれないと考えます。一般の病院に入院している場合は症状に応じて医師も看護婦も努力し、最後まで入院を継続する場合がほとんどです。しかし最近は患者がホスピスに移る場合も少なくないようです。

いずれも痛みなどの症状を少しでも取り除いてもらいたい、という場合が圧倒的なようです。痛みの緩和のために麻薬の処方に消極的な医師の場合にはホスピスに移った方が病人の苦しみを取り除くことが出来ます。また症状が複雑で、いろいろな薬の組み合わせを必要とする場合にも、ホスピスの方が適切な対処を行なうことが出来るでしょう。

精神的な苦痛を和らげる

身体の痛みは、ときには精神的な問題が加味されている場合が少なくありません。また死の恐怖で悩んだり苦しんでいる場合もあるでしょう。その際には、ゆっくりと話を聞いたり、精神面に作用する薬を併用するなど、その人の状態に即した方法を用いる必要があります。

ホスピスの医師や看護婦は、精神的な問題に積極的に対処しようとします。一般の病院では処置その他の仕事に追われてゆっくり話す時間がない場合が多いのですが、ホスピスでは時間をかけた対話や交流も大切な症状への対処方法と考えています。

静かな環境

ホスピスは建物の構造や設備上の点で、医療以外の生活の幅を広げようとする態勢が考えられていて、終末期の生活をより快適に、充実して送れるよう配慮されています。

たとえば、個室が多く、病室内にトイレがあり自分で歩いてトイレに行きやすい。家族が泊れる部屋がある。病人のために家族が調理できる台所がある。庭や池があり散歩できる。宗教的な支えがあるところもある。したいと思うことが行えるよう職員が援助する姿勢を持っている、などの環境が用意されています。

ホスピスに入るには

病名や予後を知っている場合に、病人自身がホスピスに入りたいと考える場合があります。しかし現状では、家族がホスピスに病人を入院させ、苦痛な症状を取り除いてあげたいと思う場合が多いようです。その際、病人を受け入れるうえでどのような手続きが必要なのかは、各ホスピスによって異なりますが、以下のようなことに気をつけます。

  1. 病院入院中にホスピスに移る手続きを進める場合は、病院の主治医に了解を得る必要があります。もし家族が直接ホスピスの医師に連絡をとっても、ホスピスの対象になる病状の患者かどうか確認するため、現在の主治医の意見書を用意するよう求められるでしょう。また、医師同士の連絡により病状の確認が行われます。
  2. 在宅療養をしている場合には、直接ホスピスを訪れます。病状や各種の問題を把握したうえで、受け入れが検討されます。ホスピスによっては関係者チームが相談して決める方式をとっているところもあります。もし、医療機関との関係がまったく切れてしまっている場合は、とにかくホスピスに行って相談してみるとよいでしょう。
受け入れ条件

ホスピスの受け入れ条件は、ホスピスにより多少の相違があるので、選択の際にはあらかじめ調査が必要です。ホスピスによっては、受け入れ条件としてガンの発生部位をある程度限定していたり、年齢や、家族が泊まりこみで付き添うことを条件にしているホスピスもあります。

ホスピスが設けられている病院は、一般病院、療養所、老人病院など多様です。現段階ではホスピスのあり方について統一された基準が設けられていないので、ホスピスそれぞれに考え方が多少異なると思います。しかし、ガン終末期に現れる症状を積極的に抑えることや、精神的な苦しみを支えようとすること、また家族に対しても援助を行うという点では共通しています。

応急手当

とっさのときの心得
  1. 病人が急変した場合は、あわてず冷静な判断が大切です。沈着さこそ応急手当の第一歩です。
  2. 病人をむやみに動かさず、安静にするのが第一です。
  3. 患者は不安になっています。心配を増すような言葉は慎み、病人を元気づけます。
  4. 無意識のときは飲物を与えません。液体が肺に入りやすい状態なので危険です。
  5. からだが冷えないよう、適当に毛布などをかけて保温に注意します。
  6. 意識を失ったり、嘔吐のあるときは窒息の危険があるので、気道を確保するように注意します。
  7. かかりつけの外科・内科医の電話番号をメモしておき、医師や救急車に大至急連絡します。
救急車を呼ぶ

あわてている場合が多いが、落ち着いて次の要領で呼びます。

  1. 電話をしている自分の名前と、救急車の依頼をします。
  2. 病人の病名や容態などを知らせます。このことが救急隊の処置をスムーズに運ばせます。
  3. 病人のいる場所やよく目立つ目標をはっきりと伝えます。
  4. 救急車が来るまでの間、病人に付き添い看護の手をゆるめないようにします。
  5. 救急車に同乗する場合があるので、簡単な外出着に着替えておきます。
蘇生法

蘇生法とは、呼吸が停止したり心臓が止まったときに、適切な処置を施し生命を救う方法です。蘇生法には、気道の確保、人工呼吸、心臓マッサージの順で行なうのがコツです。

人工呼吸法

人工呼吸を行なう前に、まず次のような処置をします。

  1. 口や鼻の中に異物がつまっていれば、できるだけ早く取り除きます。
  2. 相手の衣服をできるだけゆるめます。
気道の確保

意識を失うと、舌の根元がのどの奥に落ちこんで、気道をふさいでしまいますので、相手の頭をできるだけ後ろに反らせるようにして、気道を開いてあげねばなりません。

マウス・トウ・マウスの方法
  1. 深く息を吸い、相手の口に自分の口をおおうようにして息を吹きこみます。このとき、指で相手の鼻をつまみ、吹きこんだ息が漏れないようにします。
  2. 次に口を離すと、相手は胸の弾力で自然に息を吐き出します。
  3. 口を離したら大きく息を吸い、また相手の口に自分の口を当てて、息を吹きこみます。吹きこみの回数は、1分間に12回から15回程度です。最初の4回の吹きこみは、急速に行うようにします。
  4. 人工呼吸中に、相手が嘔吐するような場合、頭を後ろに反らせたまま、からだを横に向かせて吐かせてから、口の中を十分にぬぐいます。なお、口と口が触れることへの抵抗感や不潔感があるときは、ガーゼなどを相手の口におおって行ないます。
心臓マッサージ

心臓が止まっているかを知るには、大きな動脈の拍動がない、呼吸が止まっている、瞳孔が大きく開いている、心臓の音が聞こえない、皮膚の色が暗紫色になっているなどの症状で判断できます。このような場合は、直ちに心臓マッサージを行ないます。

<方法>

  1. まず患者を、かたいものの上にあおむけに寝かせます。自分の両手を重ね、胸骨の下半分の部分に当てます。
  2. 両手に体重をかけるようにして、両手が3、4cm沈む程度にリズミカルに圧迫します。これを1分間に60回ほどくり返します。
病人を運ぶ

病人を運ぶ場合、普通あおむけにしますが、意識を失っている場合や、首や背骨を強く打った場合には、運び方、寝かせ方に、特別の注意を払います。また運び方、寝かせ方で、患者の容態をいっそう悪くさせてしまうことがありますので注意が必要です。

  1. 背負って運ぶ方法
    力がない人でも運べるし、患者の背骨を曲げないで運ぶことができます。
  2. 抱き上げて選ぶ方法
    力のある人でないとむずかしい方法です。意識を失っている患者は重いのでこの方法は使えません。
  3. 抱きかかえる方法
    患者に意識があって、歩けるような場合に使います。
担架で運ぶ
  1. 担架は必ず患者のわきまで運び、患者を担架に移します。
  2. ショックを予防するために必ず毛布などで保温します。ただし患者が暑がる場合はいけません。
  3. 後方にいる人は、患者の容態の変化を観察できるように、患者の足を進行方向に向けて運びます。ただし坂を登る場合には、患者の頭が前にくるようにして運びます。
意識を失っている場合

患者が意識を失っている場合は、すぐ横向きにして寝かせ、頭を後ろにそらしてのどを広げるようにし、顔は下向きに地面のほうに向けます。これは気道を確保するためと、嘔吐が起きたとき、吐物が流れやすくするためです。ひざは少し曲げます。

自動車で選ぶ

痛みを感じさせないで自動車に乗せることは困難です。また乗用車では、患者を水平にして置くことは不可能に近いので、救急車が使用できないときは、荷台の広いバン型の車に寝かせて運びます。乗用車の後席に乗せて運ぶことは子供の場合以外は避けます。特に意識を失っている場合には、気道がせばまったり、吐いたものがのどにつまらないように注意します。

死の心理経過

「死の瞬間」の著者キュブラー・ロス女史は、死を告知された患者は、どのような心理的変容をたどって死を迎えるかということについて、一つの臨床的研究を行い、患者の死に対する考え方と死の恐怖をどのようにして和らげるかという問題について、具体的に考える手掛りを提供しました。

死を迎えるまでに人間の心理はさまざまな様相をたどります。死は人にとってもっとも個人的、内面的な出来事であるからです。したがって、キュブラー・ロスが症例研究から概念化した「死の過程」も、どのような死にも当てはまるというものではないでしょう。しかしながら、彼女が示唆した一連の逐次的な5つの段階は、死の過程に一つの輪郭を与えたものと考えられます。

死の段階は、キュブラー・ロスが200人の死に臨んだ患者と面接し、そこから選んだ死の経過を記述したものです。

キュブラー・ロスの死の段階モデル
第1段階「否認と隔離」

私にはそんなことはあり得ない」といい、死を認めようとしません。死を遠ざけようとする段階です。否認は、一時的な自己防衛機制によって生じます。やがて徐々に死を受容し始めます。

第2段階「怒り」

死の否認という段階が維持できなくなると、やがて死ななければならないことに対する怒り、さらに生き統ける健康な人々ヘの羨望、恨みなどのさまざまな気持ちが現れます。

第3段階「取引き」

この段階は「交換条件」のようなものであって、神仏や超自然な力に対して何らかのお願いをして約束を結びます。たとえば、「病気が治るならば、自分の財産を寄付してもよい」などと…もし、それが出来ないならば、せめて痛みや身体的不快のない状態がほしいと願うのです。

第4段階「抑うつ」

末期の人はたび重なる手術あるいは入院治療を受けなければならなくなり、さらに「取り引き」にかかわらず、ますます病いが悪化する兆候が現れはじめて、衰弱も加わってきますと、現在までにやり残してきた仕事や、さまざまな後悔などの思いが患者の心に去来し、抑うつ的になります。

第5段階「受容」

受容はこれまで生きることへ向けられていたエネルギーが、それから離れることを意味します。苦痛との戦いが終わり、長い旅路の前の最後の休息の時がこれにあたります。患者が突然死や事故死ではなく、何らかの形で死を予期し、覚悟してきた患者は、このような心理的経過を経て、やがて死を受容して死んでいくといっています。こうした精神的な葛藤を生き抜いてきた人は、それまでより人格的に成長するということがいえるでしょう。

もっとも、こうしたプロセスはあくまで、一つのあり方であって、最後まで死を受け入れないで死んでいく人や、子供たちの将来を安じながら死んでいく人たちも多いことでしょう。

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